バルコらしさの象徴、デザインの話【前編】
バルコが目指している「上質な洗濯時間」の提供のために、大切にしていることのひとつが「デザイン」です。 清潔感があり、シンプルで温かみも感じられる店舗と、黒と白を基調とした存在感のあるロゴマーク。これらのデザインは、一体どのように誕生したのでしょうか。 今回は、バルコらしさの基準でもあるBaluko Laundry Place 代々木上原の設計・施工を担当した TANK(タンク)の中尾文哉さんと、ロゴマークをデザインしたグラフィックデザイナーの栗原弓弦さ んにお話をお聞きしました。 前編は店舗デザインについて、後編はグラフィックデザインについて、2回に分けてお届けします。
新しい コインランドリーの在り方
Baluko Laundry Place 代々木上原は、2019年にオープンしました。
通りに面した大きなガラス面から見えるのは、ずらりと並んだシルバーの大型の洗濯機や乾燥機。お店そのものが、まるでショーウィンドウのようにも見える、開放的なデザインが特徴です。
お店の中では、本を読みながら、洗濯が終わるのを待っている人、終わった洗濯物をランドリーバッグに詰めている人、コーヒーを飲みながらひと息ついている人・・・。
機能的であり、無駄をそぎ落としたミニマムなデザイン性の高い空間は、コインランドリーでの過ごし方も変えました。
今では当たり前となった風景ですが、これらは代々木上原のお店がオープンしてからのこと。中尾さんは、店舗の設計をする前に考えたことについて、こう話します。
中尾さん:「バルコは、業務用の高性能でデザイン性も高い洗濯機や乾燥機を取りそろ え、上質な洗濯体験を提供するというコンセプトで展開していくことが決まっていました。課題は、その価値を、店舗を通じてどう伝えていくか。その方法として考えたのが、洗濯機や乾燥機などのマシンを前面に押し出していく店舗でした」
安心して過ごせる死角のない空間
中尾さんは一般的なコインランドリーのリサーチをする中で、気付いたことがありました。それは、なんとなく薄暗かったり、清潔感が感じられにくかったりすること。そこで、安全面に対する不安を取り除く必要があると考えました。
それは、ある意味、コインランドリーのイメージチェンジにもつながること。
中尾さん:「死角がない、できるだけオープンな空間にして、清潔感も保たれる。誰もが安心して入れるように、街とのつながりを意識して設計を進めました」
Baluko Laundry Place 代々木上原は、「間口が広い」という特徴があります。それを最大限に活用し、中尾さんが考えたのが、通りに面した部分はできるだけガラス貼りにして、機能的でデザイン性も高い業務用の洗濯機や乾燥機を外から見えるように設置すること でした。
中尾さん:「そうすることで、店舗自体が看板になり、たまたま通りがかった人の目を引き、ここがコインランドリーであるというアピールにもつながると思いました。マシン自体の盤面の色を変えることができたので、シルバーで統一することも提案しました」
特にこだわったのが、お店(内)と街(外)がシームレスにつながっているような状態にすること。お店が街に拡張しているようなイメージで、外にもベンチを設置し、窓側にカウンター席も設けました。少しでも隔たりをなくすために、ガラスのサッシなどもできるだけ細いものを選んでいます。
カフェのあるコインランドリー
Baluko Laundry Place 代々木上原は、コインランドリーだけでなく、カフェと、クリーニングや洗濯代行サービスを併設することも決まっていました。
理想は、ランドリーやクリーニングの利用するお客さまが、ついでにコーヒーやドーナツを買ったり、コインランドリーやカフェに来た人が、「今度はクリーニングを利用してみようかな」と自然に思ったりできること。
中尾さん:「そのためにも、それぞれの空間をあえて区切らないようにしました。人が滞留するスペースを空間のまん中に設けて、テーブルと椅子を配置。そのまわりにランドリーのマシン、カフェ、クリーニングや洗濯代行サービスのコーナーなど、必要な機能を並べる現在のレイアウトにしました」
出入り口が2つある理由
街に開かれた、気軽に立ち寄れる場所となるように、居心地のよい空間を目指しました。
考慮したのが、店内の席数を増やしすぎず、かつテーブル席やカウンター席、ベンチなど、席の種類をつくり、来店したお客さまが選べるようにしたことです。
中尾さん:「コインランドリーを利用して洗濯が終わるまでの約1時間、仕事しな がら待つ人はテーブル席やカウンター席。セットして一度家に戻り、少し早めに取りに来た人はベンチ席など、シーンを想定しながら、カウンター席の場所や家具の材質なども考えました。来店したお客さま同士、お互いが気にならない距離感も意識しました」
安心感を担保するために、できるだけ「奥」をつくらず、「これまでの店舗ではブラックボックス化しがちな場所もできるだけオープンにした」と中尾さん。洗濯機や乾燥機の上に設置される換気用のダクトも、あえて隠していないのも、そういった理由から。
カフェやクリーニングコーナーの作業スペースもガラス張りにして、できるだけ“見せるデザイン”にしました。本来、隠している部分をオープンにすることで、清潔感を維持することにもつながるという考えです。お客さまから見える部分が多いということは、常に清掃して清潔感を保ち続けなければならず、その運用は決して簡単ではありません。
中尾さん:「簡単ではないことをやり続けることが同業他社にはない独自の価値となり、今までのコインランドリーとの違いが際立つのだと思います」
必要最小限、見せないところも確保する
設計をする上で苦労したのは、限られた空間を有効活用することでした。
できるだけランドリースペースを広く確保するために、カフェやクリーニングコーナーはコンパクトにしつつ、仕事のしやすさも考慮し、作業に合わせた通路幅を見いだし、収納もできるだけ確保したといいます。
中尾さん:「できるだけ開放感を保ちながら、バックヤードのような必要最小限、見せないところも確保する。その絶妙なバランスは検証を重ね、安心して利用できる店舗を目指しました」
清掃のしやすさも考慮し、素材を選ぶときの基準は「水拭きができること」。
たとえば、什器の素材は、ステンレスをはじめ、しっかり塗装されたスチールや、人工大理石など、劣化しづらく、経年変化が味わいになるものをセレクト。業務用の洗濯機や乾燥機の工業的な印象に偏りすぎないように、天然の木材も什器として使用しています。
中尾さん:「Baluko Laundry Place 代々木上原の世界観が、今後のバルコのベースとしていくことが決まっていたので、展開しやすさも考慮しました」
現在バルコは、全国に220店。各店、Baluko Laundry Place 代々木上原の世界観を踏襲しながら、地域の特性や客層などに合わせて店舗のデザインはアレンジもしています。
それでも世界観がぶれないのは、グラフィックデザインを統一していることも理由のひとつ。後編では、グラフィックデザインの開発プロセスを解説します。
中尾文哉さん
株式会社TANKにて設計・施工を行う。
施工者として「ブルーボトルコーヒー京都カフェ」、設計者として「OFS.TOKYO」などを担当。