バルコらしさの象徴、デザインの話【後編】

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バルコらしさの象徴、デザインの話【後編】バルコらしさの象徴、デザインの話【後編】
#デザイン#バルコのこだわり#バルコのこと
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バルコは、コインランドリーにおける新しい価値や体験をもたらすために、独自の世界観でサービスを提供しています。そんなバルコらしさをつかさどる、デザインの開発プロセスを解説する内容。今回は後編です。

建築とともに強度のあるデザイン開発

Baluko Laundry Place 代々木上原の店舗の設計・施工を担当したTANKの中尾文哉さんは、設計を手がける初期の段階でグラフィックデザイナーの栗原弓弦さんに相談。その理由について、中尾さんは次のように話します。

中尾さん:「コインランドリーをリサーチしていると、一般的に洗濯機や乾燥機の使い方やコースの案内など、伝えるべき情報が色々あることがわかりました。その案内表示のデザインによって、空間の印象は変わります。情報整理はいずれ必要になると予測できたので、バルコ独自の世界観をつくるためにも、建築と一緒にロゴマークや案内表示(サイン)などのグラフィックデザインの開発を進めていこうと考えました」

中尾さんがイメージしていたのは、必要な情報がしっかり伝わる、シンプルだけど強いデザイン。ものごとの本質を抽出し、独自の感性で表現する。

中尾さん:「そんな強度のあるデザインをイメージしたとき、これまで栗原さんが手がけてきたデザインがぴったり合うと思いました」

 

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設計・施工会社「TANK」の中尾文哉さんと、グラフィックデザイナーの栗原弓弦さん

 

コインランドリーをシンボル化

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栗原さんがまず取り組んだのは、ロゴマークのデザインです。

ガラス越しに見える、業務用の洗濯機や乾燥機が一番の看板になる。その考えを基にロゴマークのデザインでも踏襲することに。

意識したのは、2つの強度でした。誰が見てもすぐにそれとわかり、長い年月に耐えうるデザインとしての強度、そして店の看板として大きく使用しても、ウェブサイトやチラシで小さく使用してもロゴの印象が変わらない、機能や形態としての強度。そして完成したのが、王道のヘルベチカで組んだロゴタイプと、業務用のマシンを極限まで抽象化したロゴマークです。

マークについて、「コインランドリーといえば、乾燥機が2台上下に重なっている様子をイメージする人は多いはず」と栗原さん。丸と四角を組み合わせたシンプルな幾何学的なマークは、バルコの頭文字「B」のようにも見えます。

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栗原さん:「デザイン案をTANKさんに見ていただいたとき、コインランドリーの地図記号にできそうだねと言われました。それを聞いて、デザインが完成したことを確信したのを覚えています」

地図記号は、土地の様子や建物などを、極めてシンプルにシンボル化したもの。それと同様にバルコのマークも、コインランドリーのシンボルともいえるデザインです。

ロゴタイプは、ヘルベチカという書体を基にデザインしています。ヘルベチカは、シンプルでありながら存在感のある、世界的に有名な欧文書体です。

栗原さん:「バルコは、業務用マシンの工業的な美しさや、素材そのものを大切にすることをコンセプトにされていたので、それにふさわしい書体を考えたとき、今こそヘルベチカを使おうと思いました。ヘルベチカはその過不足ない書体の完成度から、困るとつい使ってしまう書体の代表でもあるのですが、今回のブランディングではこの書体の強さと機能がバルコのコンセプトとマッチしていたので、ヘルベチカの持つ力を自分なりに活かしきるというチャレンジでもありました」

ロゴマークについて中尾さんは「自分の想像を超えたデザインでした。わかりやすさは大切にしながら、シンプルな表現に振り切っている。その潔いかっこよさは、まさにバルコらしさを表したものだと思いました」
 

世界観が保たれる理由

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店内の案内表示も、ロゴタイプと同じく、ヘルベチカでデザインしています。
気をつけたのは、第一に読みやすさ。

栗原さん:「知りたい情報をスムーズに得ることができることと、その情報が整っていてかっこいいということを、どちらも犠牲にすることなく両立させる。単純ですが、そういうデザインを目指しました」

どの店舗でもデザインのトーンが変わらないように、そして情報を過不足なく整理するために、文字情報を区切る必要があるときは、なるべく大きさ・太さ・単線のどれか一つで検討するというルールもつくりました。たとえば、文字を太字にしたなら区切る線は要らない、文字を大きくしたなら太字にする必要はない、など、重複する強調を丁寧に削ることによって、情報の見やすさと視覚的な美しさを両立させる試みです。

もう一つ、バルコのデザインにはルールがあります。それは、文字と文字の間を必要以上にあけずに、詰めること。

栗原さん:「文字間を詰めることで、文字の“見た目”と、“音”の印象が合致するような気がするんです。たとえば、『チャ』という言葉は、2文字で構成されていますが、音としては1音ですよね。なので離れていると少し読みにくい。リモコンやオーディオなどの電子機器に書いてある“VOLUME”とか、コックピットの計器に書いてある文字のような、いわゆる機能文字が好きなのですが、詰めて組むのはそのイメージでもあります。実際は1文字ずつ読むわけではないので、かたまりとして目に飛び込んでくるほうが情報としては読みやすい」

文字を詰めたデザインの効果は、もう一つ。

それは、読みやすい情報でありながら、コインランドリー全体で引いて見ると、店内に散りばめられた案内がグラフィカルな絵のようにも感じられること。文字の“かたまり”としてかっこいい。ロゴマークや店内の案内表示は、機能的でありながら感覚的にデザインされています。

連動してデザインされた店舗とロゴマーク。そのデザインによって、進化しながらもバルコ独自の世界観を保つことにもつながっているのです。


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お話を聞かせてくれた栗原弓弦さんは、グラフィックデザイナーとして活動しながら、アーティストとしてドローイングなどの作品も制作。デザイン思想メディア「ÉKRITS / エクリ」のヴィジュアル制作や、雑誌「ILLUMINATIONS」「FEU」の装丁・本文デザインもしています。手がけたVIデザインに「g KEYAKIZAKA」「DDD HOTEL」などのほか、装丁を担当した書籍に『モア・ザン・ヒューマン』(以文社)など。


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