バルコと洗剤 バルコオリジナル洗剤「peu(ピウ)」木村石鹸との開発エピソード
バルコらしい洗剤とは、一体どういうものだろう。
すっきり洗いあげることは、もちろん大事。だけど、ただ洗えればいいわけではない。
どんな成分でつくられているか。その成分はどんな役割があるのか。
成分の本質をきちんと理解し、納得したものを提供したい。
洗濯物の性質や仕上がりによって、選べるようにもしたい。
コインランドリーの既成概念にとらわれず、私たちが選んだ洗剤は2つ。バルコのオリジナル洗剤「 peu(ピウ)」と、木村石鹸の洗濯用石けん「SOMALI そまり」です。
現在、peuはスタンダードコース、標準コース、羽毛布団コースなどで、SOMALIはナチュラルコースで使用しています。※各店舗で使用している洗剤は、店舗内の掲示をご確認ください。
peuが誕生したのは2019年。開発のとき目指したのは、衣類にも、人にも、環境にも優しい洗剤・柔軟剤。「洗うこと」に目的を絞り、不要な成分を繊維に残さない。不要なものを残さないから、洗濯物がすっきり洗いあがる。シンプルで高性能な洗剤です。
そんなpeuの特徴はそのまま、成分などあらためて見直すことに。今回は木村石鹸さんと一緒にpeuのリニューアルに取り組みました。
木村石鹸の営業・マーケティング部 東京オフィス長の宮本成浩さんと、技術・開発部 課長の阪田康裕さんとともにリニューアルのプロセスを振り返りながら、新peuの特徴についてお伝えします。
中性から弱アルカリ性へ その理由
リニューアルの相談を受けたときのことを、阪田 さんはこう振り返ります。
「私たちにお声がけがあったということは、職人の手作業による釜焚きで製造する「石けん」をメインとした洗剤を求められているのだろうな、と思いました。とても光栄で、ありがたいお話です。ただ、一方で、本当にお力になれるだろうか、少しだけ不安もありました。SOMALIもそうなのですが、石けんを主とする洗剤はコインランドリーで扱うのは、決して容易ではないからです」
ナチュラルコースで使用している木村石鹸のオリジナルブランドSOMALIの洗剤は、100%植物オイルからつくられる「石けん」が主洗浄成分です。
天然素材からつくられるものなので、保存方法によっては表面が固まったり、ゲル状になったりする傾向があります。もちろん、家庭で使われるときにはほとんど問題ないのですが、コインランドリーで使用する場合は配慮が必要。空気に触れさせない工夫や、保存状態の確認など、日々のメンテナンスが欠かせません。
たしかに、少し手間がかかるんです。
それ でも、バルコのナチュラルコースの洗剤には、SOMALIが最適だと考えています。
たくさんの方々に愛用されているSOMALIを、信念を持ってつくる木村石鹸さん。
そんな木村石鹸さんは私たちにとって、とても信頼できるパートナーであり、これまでも、今も、色々な相談にのっていただいています。
そして今回も、peuをより良くするために木村石鹸さんに話を聞いていただき、一緒に開発していただけることになりました。
こうした前提のもと、peuのリニューアルに向けて開発が始まりました。
まずは、バルコの要望を木村石鹸のみなさんに伝えました。
もっとバルコらしく、洗濯の本質を考えた、シンプルな洗剤を作りたい。柔軟剤の香りについても、あらためて考えたい。
こうした要望をもとに、新peuの成分は、中性から弱アルカリ性に変更しました。
“アルカリ性”と聞くと、刺激が強い洗剤といった印象を持たれる方も少なくないはずです。そもそも、中性と弱アルカリ性の違いとは何でしょう。
阪田さん:「主に皮脂の汚れを取る方法は、大きく二つあります。アルカリの力でとる方法と、界面活性剤でとる方法です。中性洗剤は、界面活性剤の働きのみで汚れを落とす洗剤のこと。合成洗剤の液性が中性(pH6.0以上8.0以下)となります。その液性を弱アルカリ性にすることで、汚れは落としやすくなります」
宮本さん:「石けんは、もともと弱アルカリ性なんですよ。動植物の油と水酸化ナトリウムや水酸化カリウムといったアルカリ剤を反応させてつくるものだからです。SOMALIもせっけんを主洗浄成分にしているので、弱アルカリ性です」
あと、界面活性剤も気になる人は多いと思います。
宮本さん:「そうですよね。特に誤解されているのが、合成界面活性剤だと思います。悪い印象を持たれがちですが、私たちは必ずしも“悪”とは思っていません。生分解性が優れたものもありますし、少ない量で汚れを落とす力もありますから。洗剤は洗濯するものや用途によって、使い分ければ良いと思っています」
阪田さん:「新peuは合成界面活性剤と天然の純石けんを配合した、肌にやさしいハイブリッド型の洗剤です。石けん成分だけでは洗浄力がマイルドなので、浸透性の高い合成界面活性剤を配合しています。皮脂 などの汚れがすっきり落ちるのが特徴です。それに加え、石けんの泡がクッションのような役割も果たすので、洗濯時の布同士の摩擦を軽減します」
羽毛布団は、アルカリ性に弱いとも言われていますよね。もちろん、バルコでも何度もテストを繰り返し、問題ないと判断しました。それでも心配な方もいらっしゃると思います。
阪田さん:「新peuは水に薄まると、かなり中性に近づきます。実際、洗濯時の液性を数値化したところ、ほぼ中性でした。ただ、本当に中性になってしまうと、汚れが落ちづらくなる。だから、中性に近づきつつも、あくまでも弱アルカリ性。洗濯物を傷める影響がなく、肌にやさしい洗剤を目指しました」
つまり、新peuは、中性に近い弱アルカリ性の洗剤になったということ。そして、今回のリニューアルのもう一つの大きな変更点は、柔軟剤を無香料にしたことです。
柔軟剤を無香料にした理由
リニューアル前のpeuの柔軟剤は、天然のラベンダーとユーカリ香料を配合していました。peuの香りを好んでくださるお客様も多く、お褒めの言葉もたくさんいただいていました。
しかし 、香りに特徴を持たせた柔軟剤は増えています。それに伴い、香りに敏感な方々がいることもわかりました。
汚れをしっかり落とし、素材をもとの状態に戻してくれる。繊維に不要なものを残さない。しかし、洗濯後の香りを衣類に残すためには、必要以上に繊維に成分が残る柔軟剤にする必要がある。
バルコは、誰にでも使ってもらえるコインランドリーを目指しています。洗剤や柔軟剤に関しても、できるだけフラットな状態にするために、今回、柔軟剤を無香料にするという大きな決断をしました。
宮本さん:「洗濯物の香りについてはニュースになることもありますよね。香りの在り方については、私たちも考えていくべきことだと思っています」
新peuの柔軟剤は無香料ですが、洗い上がった洗濯物はどんな香りがするのだろう。バルコのメンバーで確かめてみたところ、乾燥機から出した瞬間、“素材そのもの”を感じました。
今回のリニューアルは、柔軟剤の役割についてあらためて考える機会にもなりました。
阪田さん:「柔軟剤は繊維をコーティングするものではありますが、新peu の柔軟剤は生分解性に優れた合成界面活性剤を使用し、自然にも肌にもできるだけやさしく、かなりシンプルに仕上げています。柔軟剤を使うことで静電気がつきにくく、毛羽立ちにくくもなる。そのため、汚れをつきにくくする効果も期待できます」
宮本さん:「シンプルさを追求することが、新peuのリニューアルの難しさでもありましたね」
新peuは、2023年1月に完成しました。各店舗での切り替えも順次行われています。
洗濯物の種類によって、洗剤を使いわける。なんだかちょっと、豊かな気持ちになれる、洗濯を楽しむコツでもあると思います。それがバルコでは、洗濯コースを選ぶだけでできるんです。ぜひ、洗い上がりの違いを体験してみてください。
木村石鹸のSOMALIも、2023年4月から成分を一部変更し、7割が石けん成分、3割が植物性の合成界面活性剤にリニューアルしたという発表がありました。それに伴い、空気に触れても固まりにくくなり、洗剤の使用量も従来の半分くらいに減らすことにつながったそうです。
そんなSOMALIで洗うバルコのナチュラルコースに込めた想いや、誕生の経緯などについては、また別の機会にお伝えしたいと思います。