【Shop Report】三鷹のこの場所から、あたたかなやりとりと、豊かな日常を。
バルコ三鷹のお隣でお店を営む、「量り売りとまちの台所『野の』」 食材や日用品を必要な分だけ購入できる「量り売り」と、量り売りの食材を利用しながら、さまざまな屋号のカフェが入れ替わりで食事を提供する「日替わりカフェ」のお店と して、三鷹の皆さんにゆたかな暮らしの一場面を提供されています。 今回は「野の」のメンバーである小林まどかさん、小手靖子さんにお話を伺いました。
左:小林まどかさん、右:小手靖子さん
自分に必要な分だけ。量り売りの気持ちの良さ
「野の」では壁一面にずらりと、数々の量り売りの品物が並んでいます。
取り扱っている商品は幅広く、主に調味料や乾物、石鹸などの日用品も。
昔ながらの製法の商品や土地の名産品など、それぞれ「野の」メンバーの皆さんが選りすぐったこだわりの品々です。
乾物や調味料はそれぞれに合わせた大きさのガラス瓶の中に入り、手書きで品物の名前が記されています。
お客さんはそれぞれ自分の家にある容器を持ってきて、必要な分だけ容器に入れて買うことができるのです。
小林さん:「当たり前で気づかないのですが、パッケージになっているものを買うと必ずゴミが出るんですよね。量り売りだとゴミが出ないので、それが『気持ちいい』とおっしゃるお客様も多いです」
小手さん:「量り売りって、お客さんと私たちの間に絶対会話が必要なんですよ。黙 ったままお金だけ出して帰る、というふうにはならないんです。『どんな容器に入れますか?』とか『100gってこのくらい』とかね。そこからコミュニケーションが生まれて、イベントに来てくれたり、次へつながっていったりすることもありますね」
チームバルコも量り売りに挑戦。容器を開けた途端、その食材の香りがふわっと漂います。どう使おうかな?このくらいなら食べ切れるかな?など考えるのも楽しい。
みんなが集まる「まちの台所」
「野の」ではカフェ部分を「まちの台所」と呼び、シェアキッチンという形で運営しています。日替わりで別々のお店が営業し、定食やハンバーガー、スペシャルティコーヒーなど、それぞれがとっておきのメニューを提供するのです。
取材した日は自家焙煎コーヒーを扱う「キミノコーヒー」さんの営業日でした。
小手さん:「シェアキッチンにしたい、というのも早い段階から考えていました。若い方が新しくお店を始めたい、と思っても、家賃が高かったり条件の合う物件がなかったり、なかなかハードルが高いこともあるんです。飲食の経験がなくても、1日チャレンジができるような場所にしたいなと思っていました」
小林さん:「家の中で、子供ってなんとなく台所に集まって来ませんか?ご飯の匂いだったり、作っている様子だったり、そういうのが気になるんですよね。この場所もそんなふうに、みんなにとっての『台所』になれたらいいなって。イベントもよく開催していますし、なんだか美味しそうだな、楽しそうだな、とみんなが集まってくれるような場所にしたくて『台所』と名付けたんです」
取材した日は「野のごはん」の木曜日。ワンプレートにぎっしり乗った揚げたてのチキンと、まんまる鮮やかなゴーヤ。お皿も金継ぎでリユースしています。
お店を始めたきっかけ
「野の」さんは8名のメンバーで運営されています。
みなさんそれぞれに環境保護など、目指す社会のあり方があるそうなのですが、その実現のために共通する手段が「量り売り」とのこと。
ゴミを出さず、プラスチックの削減や、フードロス削減にもつながる「量り売り」のお店をやってみよう。
そこから物件を探していく中で、バルコの隣のスペースが空いていることを発見。駅からも近く、ランドリーのお客さまにも利用してもらえることをイメージして問い合わせたそうです。
小林さん:「環境問題に携わっていると、必然的に自分の住む地域のゴミの問題とか、身近なことに関心がいくようになるんです」
小手さん:「私も最初はほとんど地域との関係がない中で、勇気を出して一歩踏み出してみたことがあって。一度つながりができると、そこからどんどん輪が広がっていきました。『野の』はそういうつながりを生む場所であってほしいとも思っていています。『子ども食堂』『みんなでご飯』などのイベントでも、例えばひとりでちょっと寂しいな、と日頃感じてる人がふらっと来て、少しずつつながりが増えてくれたらいいな、と思って。もちろん、来るだけで無理に会話をしなくても大丈夫。参加できます」
ガラスの壁越しにバルコの機器が見えます。
「雨でも晴れでも天候に関係なく、老若男女、本当に幅広い世代の方が日々利用されているのをいつも見ています」と小手さん。
お客さんと店員さん、を超えて
取材中にも「野の」にはお客さまが絶えず訪れ、スタッフの皆さんとのやりとりがとても印象的でした。
学校帰りに寄ってくれた子に「おかえりー」と声をかけ、お店を出るお客さまに「またね」と手を振る。
日常の中にありながら地域に開かれ、たしかに人が行き交い、ゆたかな時間を紡いでいく。
単なる「お店」という言葉では表しきれない、あたたかいつながりが生まれていく場所なのだと感じました。
小手さん:「お客さんと店員の境目が曖昧なんです。イベントも手伝ってくれたり、お店で使う棚を作ってくれたりする方もいらっしゃいます。いつの間にかお客さんが私より量り売りに詳しくなっていることもあって、嬉しいですね」
小林さん:「市民活動してたり、環境保護に興味のあったりする方だけでなくて、誰にとっても利用しやすいお店を目指しています。まず一歩来てみてほしいです。例えば『ゴミが出なくて気持ちがいい』という感覚も、実際やってみてはじめてわかること。どんな人にとっても、ちょっといいな、と思ってもらえる。そんなふうなお店として、地域と関わっていきたいです」
量り売りとまちの台所「野の」と、誰もがつかえるランドリー「バルコ」。隣り合わせの2つのお店には、地域の人々が集い、時間を過ごす、にぎやかな空間がありました。
量り売りとまちの台所「野の」
住所:東京都三鷹市下連雀3丁目33−8(BALUKO LAUNDRY PLACE 三鷹 コインランドリー隣)